中国環境保全支援委員会

現在までの活動

 

測定機器のリサイクル

1.測定器リサイクル概要

平成7年2月から3月にかけて測定機器リサイクルを実施しました。
地方公共団体から回収してきた測定機器はそのままで中国に供与することは出来ません。
なぜなら、それらの測定機器は最低でも5年間、4万時間以上稼働し続けてきているので常に稼働する部品(ガスポンプ、記録計)は場合によっては交換しなければなりません。
交換しない場合でも、予備品を供与し、トラブルの処置が迅速に行えるように対策を取り、万一に備えています。1台あたり20〜30万円を交換部品等に充てています。

2.測定機器整備の作業手順

各測定機器の整備は以下のような手順で行っています。

  1. 測定機器の各ガラス部品を取外し洗浄する。
  2. ガス配管、液流路配管を交換する。
  3. 流量計を洗浄する。
  4. ガスポンプダイヤフラム・弁を交換する。
  5. ピンチバルブ弁のチューブ交換。
  6. 洗浄が終わった部品を組み付ける。
  7. 電源を入れ、吸収液を作成し動作状況に異常がないか確認する。
  8. 内部出力の調整、吸収液量を調整する。
  9. リークチェックを行い、異常無ければ流量校正を行う。
  10. 数時間〜数日試験稼働を行い、異常の無いことを確認してから等価液校正を実施する。
  11. 1〜10を各測定機器で実施し、終了後機種別に同時稼働させて比較試験を行う。必要なら細部の調整を行う。
  12. 12: 比較試験終了後、外装などを清掃し吸収液等液体を全て抜いた後、ガラス部分の保護、記録計部分のがたつき止めを行い、輸出梱包業者へ搬入する。

3.中国への輸出作業

私たちが中国へ測定機器を輸出する場合、以下のような書類準備をしています。

  1. メーカー発行輸出貿易管理令非該当説明書
  2. 委員会発行の無償供与贈呈書(中国文)
  3. インボイス(送り状)
  4. パッキングリスト
  5. その他、提出を要求された書類

これらの書類によって、受け取り側が通関手続きを行い測定機器を受け取るわけです。
ただし、現在の中国は法律の整備が途中段階にあり、関税についても不明確な点が多く日本側では把握しきれないため、手続きは全て受け取り側で行っています。必要な書類等がある場合にはその時に応じて作成しているのが実状です。
幸い、これまでに供与した測定機器は、全て免税で受け取ることが出来ています。

 

南京での保守管理技術移転

1993年度、南京東南大学に供与した測定機器が1年を経過したのを受けて、本年度2月に南京を訪問し測定機器の1年点検(オーバーホール)を実施し、併せて保守管理技術を移転しました。

1.1年点検作業

昨年1月に供与した測定機器6台に対する1年点検を、中国側スタッフ3名とともに邁皐喬局および玄武湖局にて行いました。
1年点検とは、測定機器内部の清掃と古くなったチューブ類を交換し、精度校正を行います。これらは、今後1年間を正常に稼働させるために行う重要な作業です。
実体験させるためまず邁皐喬局にて2日を費やし、以下の点について模範を示しながら伝授しました。

  1. 分解時の手順・注意点
  2. 清掃・洗浄の方法
  3. 組立時の手順・調整点検ポイント

玄武湖局では、主な作業を中国側に実施させ、日本側は作業フォローおよび助言を行いました。習熟は速やかであり、玄武湖局作業は1日で終了しました。最後の半日は、邁皐喬局SPM計のトラブルを処理し、全日程を終えました。


点検作業

2.通常保守および定期点検作業

精度の良い測定値を得るために、通常保守点検においてどこをチェックすべきかのポイントを彼らはおさえていません。機器設備時に渡した保守管理簿どおりに作業を行っていないので、NOX計インピンジャーや、SPM計線源ブロックでの汚れが認められました。このため、定期点検作業(3ヶ月〜1年)の管理簿を再度作成し、作業項目ごとに注意点を添えた表を作成・翻訳し保護局側へ渡しました。また、通常保守において発生し得るミス・トラブルを列挙し、原因・症状・対策に分けた表を作成・翻訳し保護局側へ渡しました。特に、NOX計のメモリーが消失していたので、停電後には必ずメモリーをチェックする旨伝達しました。

 

点検作業
点検作業

3.測定機器運転環境の問題点

南京での大きな問題はまず停電です。1年間の測定結果を見ると、1月に1度は必ず3時間程度の大きな停電がありそれが不定期で発生します。この他瞬間的な停電もしばしば起こり、停電によるトラブルで長期欠測が数回起きていました。テレメーターシステム(各測定局のデータを通信回線を使って1カ所に集めて管理する。)が整備されていないので、次回点検にいくまでトラブル発見が遅れたためです。中国での電気供給体制が急激に整備されるとは思えないので、今後目視点検だけでも増やすか、測定機器に停電対策を施す等の対策が必要だと思います。

点検作業
点検作業

4.おわりに

今年度の活動は、供与先の選定から測定機器供与、その後のフォローアップ、一方では測定機器の回収、リサイクル、輸出まで、委員会の一連の業務を経験しました。これらの経験を通じて、委員会の活動の前に大きく立ちはだかる問題がいくつも見えてきました。大きく分けると1つは機器使用環境の違い、もう1つは、環境保護に対する概念の違い、最後に中国国内における地域較差。
恐らく他の国際協力の場面でも生じているであろうこれらの問題を、どう解決するか。その回答を、日本の国際協力に求められているのだと思います。